名作漫画の共通点は連載当初の熱量を保ったまま、最終回まで駆け抜けていること。その作品だけが持つ世界にどっぷり浸れるのが漫画を読む醍醐味です。誰もが知っている人気作でも、実は読んだことがなかったり、最終回まで読み切っていなかったりすることも多いのではないでしょうか?今回紹介する漫画はどれも、最後まで読み応えのある傑作ばかり。評価が高く映像化されている作品が多いのも特徴です。まだアニメでは完結していない場合、一足早く結末を知ることもできます。シーモアで、在庫切れを気にせず一気に最終巻まで楽しんでください。
目次
【あらすじ】主人公は仙台に住む日向翔陽。自分と同じように小柄でありながら、高校バレーでジャンプ力と瞬発力で活躍する「小さな巨人」と呼ばれる地元の烏野高校の選手に憧れます。中学からバレーを始めてやっと公式試合に出場できたものの、身長に恵まれた影山飛雄率いるチームに敗退。打倒影山を期して進学した烏野高校に影山も進んでいました。影山と切磋琢磨しながら高校バレー日本一を目指す日々が始まります。
【作品情報】作者は『詭弁学派、四ッ谷先輩の怪談。』の古舘春一。本作は集英社『週刊少年ジャンプ』で2012年から2020年まで連載され、全45巻で完結しています。2014年から放送が開始されたテレビアニメは第4期まで放送されて、劇場版2部作をもって完結すると予想されています。主人公が低身長のハンデを乗り越えて活躍するバレーボール漫画です。
【おすすめするポイント】歪んで描かれる肉体が躍動感を生む独特のペンタッチが魅力。当初はライバルとしていがみ合っていた日向と影山との間に次第に信頼関係ができて、チームに欠かせないコンビに成長。日向がジャンプ漫画の主人公の定型に見えながら、意外とプレッシャーに弱いところに共感が持てます。成長するに従って、精神的な強さも身につけていきます。チームの勝負の行方と共にキャラクターの人間的成長にも注目してください。
【あらすじ】主人公・綾瀬千早は東京の小学生。福井から転校してきた綿谷新の競技かるたの腕前に触発されて、同級生真島太一と共に府中白波会の原田秀雄の下で本格的にかるたを学び始めます。ところが、新はかるたの永世名人である祖父始が倒れたため、福井に戻ることに……。数年後、瑞沢高校に進学した千早は同じ高校に入った太一を巻き込んで競技かるた部を設立し、次々と部員を増やしていきます。再会した新は始の死以来、かるたと距離を置いていました。
【作品情報】作者は『クーベルチュール』の末次由紀。2008年から2022年まで講談社『BE・LOVE』に連載され、全50巻で完結しています。テレビアニメは2011年から3期にわたって放送され、広瀬すず主演の実写映画は2016年から2018年に全3部作で製作されました。競技かるたの魅力を広めた傑作漫画です。
【おすすめするポイント】かるたの文系で地味なイメージを一新。スポーツの要素があるスリリングな競技であることがアピールされ、一気に競技かるたの人口を増やしました。個人個人の技を高めるための訓練、仲間集めやチームワークの向上とスポーツ漫画の要素もたっぷりありながら、少女漫画らしい、千早、太一、新の三角関係の恋の行方もしっかり描かれており、幅広い層で楽しめます。読んでいるうちに自然と百人一首が覚えられます。
【あらすじ】幼稚園児茂野吾郎の父茂治は横浜マリンスターズに所属するプロ野球の投手です。母は病気で早く亡くなり、茂治は試合の遠征で留守がちのため、吾郎はアパートで一人で過ごしています。幼稚園教諭の星野桃子は吾郎のことが心配で時々アパートに顔を出していました。父のようなプロ野球選手を目指し、一人で練習を重ねる吾郎。そして同い年で勉強一筋の佐藤寿也と知り合い、野球を通して友情を深めていきます。
【作品情報】原作は『健太やります!』『BUYUDEN』の満田拓也。1994年から小学館『週刊少年サンデー』で連載開始、2004年に16年間に渡る連載が終了し、全78巻で完結しています。平成7年度の第41回小学館漫画賞受賞しています。野球漫画の名作中の名作です。 2004年間からテレビアニメ化されて6年間に渡り放送されました。2018年からは吾郎の息子大吾が主人公の『MAJOR2nd』が連載されています。
【おすすめするポイント】父に憧れてプロ野球選手を目指す吾郎の半生を描く、16年にわたり連載された大長編。幼稚園から、リトルリーグ、中学、高校、マイナーリーグ、W杯、メジャーリーグ、日本プロ野球とキャリアを重ねていく吾郎の足跡が克明に描かれていきます。戦う舞台が変わっても、常に野球と真摯に向き合う吾郎の生き様に心が熱くなる作品です。幼馴染みの寿也とのライバル物語、やがて義母となる桃子との絆などの側面にも注目してください。
【あらすじ】バスケの超強豪・帝光中バスケ部の天才5人は「キセキの世代」と呼ばれていましたが、卒業後はそれぞれ別の高校に進学していました。誠凛高校に入った主人公・黒子テツヤは背も身体能力も低くて目立たない存在。しかし、存在感の薄さを強みに変えて、相手に気づかれないパス回しを得意としていました。彼こそ「キセキの世代」の幻の6人目だったのです。黒子は身体能力の優れた同期火神大我と組んで打倒「キセキの世代」を目指します。
【作品情報】作者は『キルアオ』『ROBOT×LASERBEAM』の藤巻忠俊で本作が初連載作品です。集英社『週刊少年ジャンプ』にて2009年から2014年まで連載され、全30巻で完結しています。テレビアニメは2012年から3期にわたって放送され、2017年には『劇場版 黒子のバスケ LASTGAME』が公開されています。 本作の後日談として2014年から『少年ジャンプNEXT!!』で『黒子のバスケEXTRAGAME』が連載され、全2巻で完結しています。
【おすすめするポイント】主人公・黒子のプレイスタイルとキャラクターがピッタリとはまっています。バスケはダンクシュートやスリーポイントシュートなど派手なプレイが印象に残りますが、バスケの要素はそれだけではありません。本作を読めば裏の試合運びの部分が学べて、バスケの中身をもっと知りたくなるでしょう。黒子だけでなく「キセキの世代」はみんなそれぞれ必殺技を持っており、個性のぶつかり合いも見どころの一つです。
【あらすじ】沢村栄純が青道高校野球部に入部しエースを目指す『ダイヤのA』の第2弾。1年生の夏の甲子園で予選敗退した青道は、秋の東京大会では優勝し、春の選抜に出場します。しかし、沢村は初戦に投げただけで、エースの座はライバル降谷暁に譲ってしまいます。甲子園で154kmの剛速球を見せて、世間の注目を集める降谷に対して、沢村はベンチで応援するだけで全く出番なし。沢村は夏の甲子園へ向けて努力を始めます。
【作品情報】作者は『GIANT STEP』の寺嶋裕二。本作は2006年から2015年まで講談社『週刊少年マガジン』に連載された『ダイヤのA』の第2部です。 『週刊少年マガジン』に2015年から2022年まで連載され、全34巻で完結しています。『ダイヤのA』のテレビアニメは2013年から全3期にわたって放送され、アニメ『ダイヤのA actⅡ』は2019年から放送されました。甲子園の先発投手を目指す高校野球漫画です。
【おすすめするポイント】1年生の時には結局ライバル降谷にエースの座を譲り、甲子園で真価を発揮できなかった沢村。夏の甲子園に向けての課題をこなして、活躍できるかがポイントです。沢村だけでなく、青道や敵チームの選手一人一人にフォーカスされ、それぞれの取り組みや内面が丁寧に描かれていきます。読み進めていくうちに、まるで実在するチームを見ているかのように親近感が湧いてきます。
【あらすじ】主人公・小早川瀬那は生来の気弱な性格のためにいじめられ体質。幼い頃から不良のパシリをさせられていました。瀬那は幼馴染みで姉代わりの姉崎まもりがいる泥門高校に進学。アメフト部にチーム運営を担う主務として入部することを決めます。ある日、不良に奪われた携帯を取り返すために走る瀬那を見たアメフト部の司令塔・蛭魔妖一は、瀬那の類まれなる足の速さを見抜き選手に抜擢。チームの秘密兵器アイシールド21としての活躍が始まります。
【作品情報】原作は『トリリオンゲーム』『Dr.STONE』の稲垣理一郎。作画は『ワンパンマン』の村田雄介です。2002年から2009年の間集英社『週刊少年ジャンプ』に連載され、全37巻で完結しています。2005年から2008年までテレビアニメが放送されました。また、2024年1月に『週刊少年ジャンプ』で完全新作読切が発表されました。
【おすすめするポイント】普通なら黒歴史に過ぎないパシリ経験が唯一無二の武器になるという夢のような設定。原作の稲垣理一郎、作画の村田雄介共に連載デビュー作で、既にその作家性の芽生えが見られます。徹底した取材でアメフトの世界をリアルに表現し、現実に即したあっと驚く技が繰り広げられる稲垣のストーリーテリングは圧巻。キャラクターを巧みに描き分けて、シリアスとコミカルを緩急自在に扱う村田の画力も堪能してください。
【あらすじ】主人公・柄本つくしは高校の同級生の風間陣と出会いフットサルに誘われます。未経験なのに初ゴールを決めたつくしは風間からサッカー部へ誘われますが、車椅子生活の母を放っておけず、入部を躊躇します。母に背中を押されて入部したものの、初心者で運動神経もなく苦労しますが、持ち前の忍耐強さと根気で次第にチームの中でも一目置かれる存在になります。
【作品情報】作者は『OverDrive』『一瞬の風になれ』『振り向くな君は』の安田剛士。講談社『週刊少年マガジン』に2013年から2021年まで連載され、全42巻で完結しています。2016年にはテレビアニメ化されました。2021年には『DAYS-fragment-』が『週刊少年マガジン』で短期集中連載され、全1巻が刊行されています。また、音羽さおりの漫画による『DAYS外伝』も刊行されています。
【おすすめするポイント】連載期間は2013年から2021年までの長期間でしたが、つくしが入部し全国大会に出場するまでの数ヵ月の物語です。まさにDAYSのタイトル通り、試合だけでなく選手の一日一日を丁寧に描いています。選手たちの存在感は実在していると錯覚してしまうほどリアル。対戦するチーム・桜木高校のメンバーは作者の別の作品『振り向くな君は』の主人公犬童かおると成神蹴治で、読むとさらに作品の世界が広がっていきます。
【あらすじ】主人公・鳩ヶ谷圭輔は効果の怪しい医薬品を販売するサラリーマン。会社に全ての罪を被せられて逮捕されます。鳩ヶ谷が道を誤ったのは13年前、甲子園県大会の準々決勝。鳩ヶ谷は判定に不満を持って審判を殴り、その責任を取った狭山監督は辞任。以来、母校彩珠学院野球部の成績は低迷しています。鳩ヶ谷との面会に現れた狭山監督は、彩珠学院の監督を引き受けてほしいと要請します。来年の夏の甲子園に出場できなかった場合、野球部は廃部の運命にありました。
【作品情報】原作は『頼りにしてます』『約束の日』『鳳』の神尾龍。アニメのシナリオライター上代務の別名義で、『バクマン。』『遊☆戯☆王ZEXAL』などのアニメ脚本を手がけています。作画は『奈緒子』『トキオ』『僕らはそれを越えてゆく〜天彦野球部グラフィティー〜』の中原裕です。本作は小学館『ビッグコミックスピリッツ』に2004年から2014年まで連載され、全44巻で完結しています。現実に近い高校野球の姿を描いた野球漫画です。
【おすすめするポイント】弱小チームが監督の指導によって急成長を遂げ甲子園に出場するという野球漫画の鉄板でありながら、この作品は一味違います。選手の個性別に区分けして選手に合った指導をするなど、現実に即した指導法や練習の描写に重点が置かれており、弱いチームが成長していくプロセスを丁寧に描いています。鳩ヶ谷や彩学野球部のメンバーには実在しそうなリアル感があります。
【あらすじ】「埼京彩珠リカオンズ」の天才打者児島弘道には優勝経験が一度もなく、優勝するために必要な要素を探して沖縄で自主トレをしていました。そこで、「ワンナウト」という賭け野球で無敗を誇る男・渡久地東亜と出会います。児島は渡久地をリカオンズにスカウト。渡久地が球団側に提示したのは、完全出来高制の年俸契約「ワンナウツ契約」でした。大方の予想に反して渡久地は三振の山を築き、年俸を稼いでいきます。
【作品情報】作者は『LIAR GAME』『ソムリエ』の甲斐谷忍。本作は集英社『ビジネスジャンプ』に1998年から2006年まで本編が連載され全19巻で完結しています。2008年から2009年まで『ビジネスジャンプ』で連載されたスピンオフ作『ONE OUTS 疑惑のオールスター戦編』全1巻(20巻に収録)も刊行されています。また、2008年にはテレビアニメ化されました。野球にギャンブル要素を盛り込んだ新機軸の作品です。
【おすすめするポイント】定型を覆し、ギャンブル的要素が満載の異色の野球漫画です。渡久地は野球漫画というより、ギャンブル漫画のキャラクターそのもので、勝負に勝つためなら手段を選びません。球速120kmしかない渡久地が、ギャンブル的な心理戦を制して強豪選手を手玉に取る姿は痛快。制約がある中で勝利を掴むためには何をするべきかを教えてくれるビジネス書としての側面も。正攻法で努力してもなかなか結果が出ない時にヒントを与えてくれます。
【あらすじ】主人公・花垣武道は26歳のフリーターでしょぼくれた生活を送っています。ある日武道は、かつての恋人橘日向が暴走族の抗争に巻き込まれ亡くなったことを知ります。武道は何者かに押されて線路に落ちた瞬間、12年前にタイムリープ。日向の死を回避するために奔走したものの、現代に戻っても日向の死を防ぐことができませんでした。タイムリープの方法を掴んだ武道は未来を書き換えるために何度もタイムリープを繰り返します。果たして武道は日向を救うことができるのでしょうか?
【作品情報】作者は『新宿スワン』『セキセイインコ』の和久井健。講談社『週刊少年マガジン』に2017年から2022年まで連載され全31巻で完結しています。タイトルを『東京リベンジャーズ』としたテレビアニメは2021年から3シーズン放送され、実写映画は2021年から3作製作されて完結しています。タイムリープを繰り返しガールフレンドの命を救おうとする男の物語。
【おすすめするポイント】ヤンキー×SF×アクションと様々な要素が組み合わせられた作品で、ヤンキー漫画が苦手な人も楽しめます。タイムリープして未来を書き換えるのが最大のテーマですが、26年間負け犬人生を送る武道がタイムリープの経験によって変化していく姿に感動します。現実でタイムリープは不可能ですが、若い時の気持ちに戻ってチャレンジする勇気を与えてくれる作品です。無鉄砲だけど優しいヒロイン日向が魅力的で、武道が命がけで守りたくなるのが納得できます。
【あらすじ】主人公・阿川大悟は異動を命じられ、妻有希と娘ましろと共に都会から山間の「供花村」に駐在員として赴任します。しかし、一人の老婆が遺体で発見されます。また前任の駐在員だった狩野治は失踪していました。最初は温和な田舎に見えた村は実は閉鎖的で、しかも古くから食人習慣があると発覚。やがて大悟は、後藤家の人々が関係していることを突き止めますが、何者かに後ろから鎌で頭を斬りつけられてしまいます。
【作品情報】作者は『鳥葬のバベル』の二宮正明。2018年から2021年に日本文芸社『週刊漫画ゴラク』で連載されて、全13巻で完結しています。柳楽優弥主演のドラマは2022年ディズニープラスで独占配信されました。
【おすすめするポイント】田舎への移住ブームの中で、住民トラブルのために村八分に遭った事例もあるようです。実際の田舎暮らしはそんなに甘くない。大悟一家に忍び寄る村八分の恐怖に戦慄します。大悟とましろの拭いきれない過去も明らかになって、事態はより複雑に。一コマ一コマに細かな線で施された描き込みが恐怖を煽ります。全編に張り巡らされた伏線で、一度読んだらもう一度じっくり読みたくなるサイコサスペンスです。
【あらすじ】山形県の田舎町で人の手首が発見されます。殺害後バラバラにされた体の一部で、女子高生の五十嵐真子の遺体だと判明しました。真子を殺害したとして自首してきたのは、同級生の藍川美月でした。真子は金のために男たちに食い物にされていました。女性弁護士早見は、本当は美月は誰かをかばうために自首したのではないかと推理します。しかし、美月は頑なに自分の犯行だと言い張ります。果たして事件の裏には何が……。
【作品情報】作者は『デリバリーシンデレラ』『ハレ婚。』のNON。アイドル出身という異色の漫画家です。本作は集英社『グランドジャンプ』にて2020年から2021年に連載され、上、中、下の全3巻で完結しています。
【おすすめするポイント】真っ白な雪の中から美少女の生首が出現するという猟奇的な場面や、真子が体験するおぞましい生き地獄など、暗くてシビアな内容とどこまでも美しい絵に引き込まれていきます。メインキャラ美月と真子の揺れ動く感情が繊細に表現され、雪国の風景など完成度の高い絵を何度も見返したくなる傑作です。特にクライマックスの殺害シーンは美しくも恐ろしい完璧な名場面になっています。
【あらすじ】主人公の大学生・浦島エイジは数日間記憶がなくなる現象に悩まされていました。エイジは二重人格で、記憶を失っている数日間はもう一人の人格「B一」がエイジの身体を乗っ取り活動していることを知ります。さらに、エイジが記憶をなくしていた間に女子大生が殺害されます。その犯行はエイジの父「殺人鬼LL」の手口と酷似していました。犯人がB一ではないかと怯えるエイジ。それを裏打ちするように、エイジの部屋の押し入れからは数千万円の大金と血まみれのバットが見つかります。
【作品情報】原作は『蹴児ケリンジ』『サマー・ソルト・ターン』の井龍一。作画は『恋人の注文承ります!』の伊藤翔太。2018年に講談社『週刊ヤングマガジン』で連載開始され、2019年8月からは『コミックDAYS』に移って全11巻で完結しています。2022年には山田涼介主演でテレビドラマ化されています。井龍一と伊藤翔太のコンビ作は2021年から講談社『マガジンポケット』で『降り積もれ孤独な死よ』が好評連載中です。二重人格の青年が自分を殺人犯だと疑うサイコスリラーです。
【おすすめするポイント】主人公エイジは気弱な青年なのに、もう一人の人格B一は傍若無人でどんな危険なこともやってのける性格。序盤は「もう一人の人格が殺人犯ではないか?」という恐怖をこれでもかと畳みかけてきます。やがて周囲の人たちも表とは真逆の素顔を見せることになり、人というものの底知れなさ、恐ろしさに戦慄するでしょう。展開が二転三転し、ラストまで目が離せません。
【あらすじ】主人公・有栖良平は出来の良い弟と比べられてやる気をなくした高校生。悪友のチョータと共に同い年でBARを経営しているカルベの店でタダ酒を飲んだ後、駅のホームで巨大な花火が上がるのを目撃します。気がつくと、辺りに人の気配はなく街は荒廃していました。迷い込んだ神社の鳥居をくぐると、やぐらのモニターには「げぇむ」の表示が……。それは負けたら最後、命を奪われるデスゲームの始まりの合図でした。
【作品情報】作者は『呪法解禁!!ハイド&クローサー』『漫画家・麻生羽呂と彼女の放浪絵日記キャンピングカー・ダイアリーズ』『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』『セックスちゃん』の麻生羽呂。本作は小学館『週刊少年サンデーS』で2010年に連載が開始され、2015年に『週刊少年サンデー』に移籍して、2016年に完結しています。スピンオフとして2015年から『今際の路のアリス』が『月刊サンデーGX』で、2020年からは『今際の国のアリス RETRY』が『週刊少年サンデー』で連載されました。
【おすすめするポイント】本作は一見、典型的なデスゲーム漫画の形式を取りながら、実は従来のパターンとは全く逆の構造になっています。デスゲームを通じて人間の闇を暴き苦い後味を残す作品が多い中、本作は最終的には仲間のために自分を犠牲にする心、人を信じる心の大切さを描きます。元々現実世界に対して嫌気がさしていた有栖とヒロイン宇佐木柚葉が、人を信じて前向きに生きようともがき、人間として成長する物語です。
【あらすじ】「何度生まれ変わっても、きっと恋をする……。」結婚して5年が経つのに、夫・幸太郎と相思相愛の楓。5回目の結婚記念日、予約した店に向かう途中に通り魔に刺されて死亡します。気がつくと、楓は再び結婚記念日に戻っていました。またも通り魔に襲われるのですが、なんと通り魔の正体は夫・幸太郎。何度も死んでは結婚記念日に戻っていくうちに、幸太郎の真の姿を見てしまいます。幸せな夫婦像はもろくも崩れ去っていきます。
【作品情報】作者は『黒脳シンドローム』『異常死体解剖ファイル』『爪痕-それでも結婚、続けますか-』『超訳マンガ×オチがすごい文豪ミステリー』の石川オレオ。ソルマーレ編集部のオリジナルレーベル『ズズズキュン』の作品として2022年にプロデュースされ、2023年に全16巻で完結しています。結婚記念日に夫に何度も殺される悲しい運命を背負った妻の物語です。
【おすすめするポイント】死に戻りループを絡めた現実離れした設定ですが、傷つきやすいヒロイン楓の心理描写や夫の浮気の証拠を掴むプロセスは現実味があります。「心の殺人」と呼ばれる不倫に傷つけられたヒロインが、再生して自立していく成長物語。タイトルについた「死」は死に戻りと同時にヒロインの心の死からの復活を象徴しています。また不倫された場合の対策マニュアルとしても読むことができます。
【あらすじ】宇宙から来た謎の生命体に洗脳された人類は、彼らを「天人」と崇拝し、彼らの食糧として「出荷」されることを最上の喜びとしています。食糧としての教育を受けるりんどう62高校の生徒天沢大輝は、同級生で好意を抱いていた女生徒の蓮沼柚が出荷されると聞いて、世界の在り方に疑問を持ち始めます。洗脳されたままの社会と世界のからくりに気がついた覚醒者たちとの全面対決が始まり、ついに謎だった天人の正体が明らかになります。
【作品情報】原案は『捏造タイムスリップ』『つじつま合わせのタイムパトローラー』などの舞台脚本で知られる水谷健吾。原作は『我妻さんは俺のヨメ』『アポカリプスの砦』『電人N』の蔵石ユウ。作画は『アポカリプスの砦』『電人N』『機龍警察』『ロックミーアマデウス』のイナベカズ。本作は『食糧人類-StarvingAnonymous-』の続編です。講談社『コミックDAYS』で2021年から2023年まで連載され全7巻で完結しています。
【おすすめするポイント】『食糧人類-StarvingAnonymous-』の続編ですが、グロテスクな前作の要素を抑え気味にし、人類側の抵抗と天人に対する完全な復讐を目的とする派の戦いを中心に描かれています。急激な人口爆発に対して、地球温暖化による気候変動とそれに伴う災害の増加、感染病による家畜大量死や農作物の不作などで食糧不足も深刻です。リアルな描写で本当に起こるかもしれないディストピアの世界が展開。愛は憎しみを超えることができるのでしょうか?
【あらすじ】「死なない」「常人を超えた能力を持っている」新種の人類「亜人」が発見された世界。亜人は差別され、見つかり次第確保されて研究対象になり、捕らえた者には高い懸賞金が与えられます。主人公・永井圭も亜人に怯える平凡な高校生の一人です。ある日圭は、トラックにはねられても死ななかったことで亜人だと認定され、政府をはじめ人々から逃げることに……。ただ一人幼馴染みの海斗だけは以前と変わらず、圭の逃亡を手助けします。しかし、包囲網は家族にも及んでいました。
【作品情報】作者は別名義で成人向け漫画も執筆している桜井画門。『天空侵犯』の三浦追儺が5話分まで原作を担当していましたが、第6話以降はストーリーも桜井が担当しています。講談社『good!アフタヌーン』で2012年から2021年まで連載され、全17巻で完結しています。2015年からは劇場版アニメ3部作が公開され、2016年にはテレビアニメが2クールにわたって放送されました。2017年には実写映画が公開されています。人間であって人間でない亜人の宿命を描く近未来SF漫画です。
【おすすめするポイント】「多様性の時代」と呼ばれ、あらゆる差別を撤廃し、誰もが平等に生きることを叫ぶ現代。亜人の存在は明らかに差別される人のメタファーです。差別の中で生まれるのが差別する者への憎悪です。人類は差別と憎しみの連鎖を食い止めることができるのか?スピーディーなSF的展開の奥に、深いテーマが隠されています。亜人と人類との狭間にいて揺れ動く圭。圭が取った選択は?結末まで目が離せないSF巨編です。
【あらすじ】主人公・エマとノーマン、レイは孤児院「グレイス=フィールドハウス」の中で、孤児から「ママ」と慕われるイザベラの元で幸せに暮らしていました。ところが、イザベラから「近づいてはいけない」と釘を刺されていた門で、孤児院の仲間が肉として出荷される姿を見てしまいます。院は子どもたちを食肉として食べられるまでに育てる「人間飼育場」でした。3人は子どもたち全員で院を脱出する計画を企てます。
【作品情報】原作の白井カイウは本作が連載デビュー作。作画の出水ぽすかは本作以外では、小学館『てれびくん』『コロコロコミック』でゲームやおもちゃのコミカライズを担当しています。2016年に集英社『週刊少年ジャンプ』で連載が開始され、2020年に連載が終了し、全20巻で完結しています。テレビアニメは2019年と2021年に2シーズンにわたって放送。2020年に浜辺美波主演で実写映画化されました。`
【おすすめするポイント】温かみのある絵柄ながら裏では残酷なことが行われているマザーグースのような世界観。院が飼育場だと気がついた後のエマたちは、すぐに脱出するのではなく、少しずつ準備を進めます。一方、イザベラもエマたちの変化に気がつきながらも泳がせて様子をうかがっています。監視する者とされる者との心理戦がスリリングに展開していく作品です。
【あらすじ】2018年7月22日、主人公・網代慎平は義理の兄妹の小舟潮が亡くなり葬儀に参列するため、2年ぶりに故郷の日都ヶ島へ帰ってきます。幼馴染みの菱形窓は海難事故で死んだはずの潮の首には絞められた痕があったと言い、他殺の疑いが出てきます。やがて、自分にそっくりの姿をした「影」を見た人間はその影に殺されるという「影の病」の伝説を知ります。潮の妹・澪も潮が亡くなる前に潮そっくりの少女の姿を見たと言います。そして澪そっくりな少女が現れると、慎平と澪を銃で撃ち抜きます。
【作品情報】作者は『鍵人-カギジン-』『ガイストクラッシャー』の田中靖規。本作は集英社『少年ジャンプ+』で2017年から2021年まで連載され、全13巻で完結しました。また、本作の後日談を描いた『サマータイムレンダ2026 未然事故物件』が2022年の『少年ジャンプ+』に掲載され全1巻が刊行されています。2022年にはテレビアニメ化もされています。
【おすすめするポイント】慎平は7月22日からの数日間をループし続けて、人々を死に追いやった存在「影」との戦いを繰り広げます。義理の兄妹である慎平と潮や澪の青春ラブストーリーとしての面もあり、ダークでシリアスな展開を中和してくれています。作者の出身地がモデルになったという島の風景にも見惚れます。女性キャラクターの誰もがかわいくて、絵を見ているだけでも癒やされます。
【あらすじ】主人公・真野礼二は小学生の頃、大好きな特撮ヒーロー「スコルピオン・マン」の放送に間に合うよう急いで帰宅すると、姉と父母が何者かに殺害されていました。それから家族を殺した犯人を突き止めるために、警視庁科学捜査研究所の法医科に所属する法医研究員の主任になり、ヒーローは決して助けてくれないという戒めとして白衣の胸ポケットにスコルピオン・マンのフィギュアを入れるようになっていました。
【作品情報】作者は『ブラッディ・アイ-晒されてシネ-』の古賀慶。本作はコアミックス(旧ノース・スターズ・ピクチャーズ)『月刊コミックゼノン』に2016年から2023年まで連載され、全13巻で完結しました。2019年にはテレビドラマ化され、スピンオフ作『ブルータル殺人警察官の告白』が伊澤了による作画でウェブコミック配信サイト『ゼノン編集部』(旧コミックタタン)にて連載開始されています。
【おすすめするポイント】テレビの刑事ドラマでお馴染みの科捜研ですが、案外その仕事内容を知らない人も多いのではないでしょうか?漫画を読んでいくうちに科学捜査の方法と科捜研の仕事の大変さを知ることができます。物語は礼二の家族を殺した真犯人と家族の秘められた謎に迫っていきます。そして、家族の殺人に関わるシリアルキラーとも対決。事件の真相が明らかになるにつれて起こる礼二の心の変化にも注目してください。
【あらすじ】前作『善悪の屑』の続編。場末の古本屋「カモメ古書店」を営む主人公・鴨ノ目武は裏稼業で依頼人の晴らせない怨みを代わりに晴らす「復讐屋」を営んでいます。前作では秘められていた妻子を亡くした経緯が語られます。他人のために復讐をし続けてきたカモが今度は復讐される立場に……。ライバルの復讐業者「朝食会」がカモを監禁。カモの相棒・トラこと島田虎信は救出に駆けつけます。そこに待っていたのは、「朝食会」代表の榎加世子とそのパートナー鶴巻裕でした。
【作品情報】作者は『善悪の屑』の渡邊ダイスケで、本作は『善悪の屑』の第2部です。本作は少年画報社『ヤングキング』で2016年から2023年まで連載され、全15巻で完結しています。スピンオフ作品も同じく『ヤングキング』に連載され、永田諒作画の『園田の歌』全6巻、小林拓己の作画による『朝食会RISEOFBREAKFASTCLUB』も7巻(2023年12月27日時点)発売されています。
【おすすめするポイント】本作では前作『善悪の屑』で語られなかったそれぞれのメインキャラの過去が明らかになり、よりキャラクターに親近感が湧いてきます。カモが受ける依頼のほとんどは現実にあった事件に酷似しています。現実では一方的に被害者ばかりが酷い目に遭って、加害者側は無傷な場合が多いものです。カモたちの行動も一理あるのではないかと考えさせられます。クールなカモやトラが時折見せる優しさや涙がたまりません。
【あらすじ】産業革命で隆盛を極める19世紀後半の大英帝国。貴族モリアーティ家の跡取り息子アルバートは、孤児院で天才少年を見出し、心臓の悪い弟ルイスと共に養子に引き込みます。その後、アルバートは少年と共に火事に見せかけて家族を殺し、一家を乗っ取りました。天才少年は次男ウィリアムに成り代わり、権力を笠にして弱者をいたぶる貴族を人知れず葬り、平等な社会を実現するために活動します。一方、アルバートはイギリス陸軍に入隊し出世を重ね、諜報組織MI6を統括することになります。
【作品情報】原案はコナン・ドイル作の『シャーロック・ホームズ』シリーズで、構成は『All You Need Is Kill』の竹内良輔、漫画は『アルティメットドールズ』『監視官常守朱』の三好輝が担当しています。本作は集英社『ジャンプスクエア』に2016年から2023年まで第1部が連載され全19巻で完結しています。テレビアニメは2020年から2クールにわたって放送されました。
【おすすめするポイント】とにかくモリアーティ3兄弟が美しく、彼らを見るだけでも読む意味がある一作。名探偵シャーロック・ホームズの宿敵モリアーティ側の視点から描いたピカレスクロマン。本作でモリアーティ兄弟は、完全犯罪で庶民をいたぶる貴族を何の見返りもなく葬るダークヒーローとして描かれています。ワトソン、ホームズを翻弄した悪女アイリーン・アドラーなど、『シャーロック・ホームズ』でお馴染みのキャラクターだけでなく、ジェームズ・ボンドやマネーペニーなど007のキャラも登場します。
【あらすじ】カリスマ読者モデルで豪華な暮らしをする、医者の妻・御手洗真希子。御手洗家の家事代行として雇われた山内しずかの正体は、真希子の夫・治の実の娘村田杏子でした。13年前の火事をきっかけに真希子から全てを奪われた杏子の母は、治と離婚し、心を病んでいます。真希子に復讐するため御手洗家に潜入した杏子は、真希子から踏み込んではいけないと釘を刺されていた2階へ――そこには、かつては社交的だった真希子の長男希一が引きこもっていました。
【作品情報】作者は『17歳の塔』『私のアリカ』の藤沢もやし。講談社『Kiss』で2017年から2021年まで連載され全8巻で完結しています。2023年に永野芽郁主演でNetflixにて実写ドラマ化されました。
【おすすめするポイント】ヒロイン杏子は元々御手洗家の長女。御手洗家を乗っ取った真希子やその子どもの希一・真二とは幼馴染みです。顔見知りであるはずなのに、大胆にも身分を偽って御手洗家に潜入。「いつか素性がばれるのではないか?」とハラハラドキドキしながら、やがて、意外な放火犯の正体が浮き彫りになってきます。タイトル通り自宅の炎上から始まる作品ですが、「火事」だけでなく、御手洗家に関わる全ての人の裏の顔と真実があぶり出されていくことも象徴しています。
【あらすじ】主人公の男子高校生・吉川泪は小学生の時に弟が死んで以来、霊や普通の人には見えない物の怪の姿が見えるように……。ある日、コンビニでアルバイト中に客の女子高生・小栗美弥の背中に分厚い唇のオバケを見ます。その夜、美弥は何者かにメッタ刺しにされて殺害されます。あろうことか今度は唇のオバケが幼馴染みの女子高生・高岡まどかに取り憑いていました。唇のオバケは泪に「7」と伝えます。まどかは7日以内に殺されるというのです。
【作品情報】作者は『人類蝕』のみつちよ丸。本作は集英社『少年ジャンプ+』で2017年から2018年まで連載され、全3巻で完結しています。2019年からは本作の続編『生者の行進 Revenge』が、みつちよ丸の原作と佐藤祐紀の作画により『少年ジャンプ+』で連載され、2022年に全6巻で完結しています。
【おすすめするポイント】おどろおどろしい怪奇ものではなく、オカルト仕立てのミステリーです。シンプルな絵柄で恐怖を中和しているので、怪奇漫画NGの人でも楽しく読むことができます。霊が見える力がある泪ですが、霊からのメッセージがわずかなヒントになるだけなのがポイント。泪は名探偵でも霊媒師でもないのでピンチを招きますが、小さな手がかりをヒントに連続殺人事件の犯人を追いかけます。脇キャラの除霊師・神原省吾はのちのスピンオフ作品で主人公として活躍しています。