しとしとと濡れるからだと心
シーモア恒例の限定特集、今回のテーマは「雨」。普段はキャラ属性やプレイ内容、ストーリー傾向などで特集テーマを固めることが多いのですが、今回は少し趣向を変えまして天候と恋愛を絡めてみました。晴れ・曇り・雨・雪と数ある天候の中から、特に心の機微と密接に関わっていそうなものとして「雨」をピックアップ。
しとしと雨、土砂降り、雷雨……降り具合によって意味が変わるところに注目してみてください!
表紙に描かれた雨上がりのような光の眩しさと、みずみずしさ……そんなイメージが一冊に詰まった、美しく切ないBLコミックスです。
登場人物は旅行ライターの雨森と、編集者の由比。雨森は、「運命」や「キス予告」さらに「セックス予告」まで初対面でしてしまう、発言がちょっとアレな(ずれてる)攻め。最初は驚きますが、彼の頭のネジが飛んでいるような言葉も、だんだんと愛おしくなってきます。
本作は、前半と後半で印象や展開がガラッと変わるSFチックな側面もあります! 王道展開とファンタジーを織り交ぜつつ、読者のときめきのツボを押しまくる……! 序盤は軽い口当たりのおもしろ攻め作品かと思いきや、最後には涙でページがめくれなくなります。甘いシーンもあれば切なく胸をえぐるシーンもあり、一冊でいろいろな感情が引き出されます! あり得ない設定の世界観に浸りたいあなたに、おすすめです!!
借金を抱えている古本屋の店主・真名はモノの声を聞くことができる超能力を持っている。ある日その力を借金の取り立て屋・赤羽根に知られ、借金を盾に強引に彼の仕事に巻き込まれていきます。さらに彼から個人的な依頼もされるが、それは彼の母親を探してほしいというもので……。
人間とモノの繋がりの声が聞こえるからこそ、モノに囲まれ他人との距離を置いて孤独に生きる真名と、母親に捨てられつつも母親への執着を捨てられない一方でモノに執着しない赤羽根。対照的なようでいてどこかお互いに同じ傷を持ち、感情を分かち合うふたりが反発しつつも惹かれあうのは必然だったのかもしれません……。 雨の中に佇む受けの真名にまるで彼の方を見ようともせず赤羽根が傘を差しだす表紙が、まさに作中のふたりの関係性を表しているようです。寄り添いあうのではなく、かといって突き放すのでもないが、お互いがいることで雨の中でも歩いて行ける、そんなふたりの姿が描かれています。
傘を持って振り返るふたりが印象的な表紙の雨空BL。BL業界を牽引する作家・日高ショーコ先生の作品です!
登場人物は友達以上、恋人未満なふたり。幼馴染、同級生、同居人……と関係を変えてきましたが、「これどう考えても友人を超えた愛があるでしょ!?」という要素がたっぷり! 読者もモダモダしながら両片思いを見守る、切なさの赤い実が弾けるような作品に仕上がっています!! さらに表紙で雨がしとしとと降るように、ストーリー全体も湿度高めお空は暗め。そんな陰鬱とした雰囲気こそ、これからの展開に妄想が膨らみます。1巻の時点ではどちらが攻め・受けのポジションなのかは未知! その前にふたりがくっ付いてくれるのかさえ、分かりません。しかし、それこそが楽しいのです。続きを待ちわびる期待感と捗る妄想……その余韻こそが日高ショーコ先生作品の醍醐味! ぜひお手にとっていただきたい作品です。
ヤクザの息子である城田が雨に紛れるようにして涙を流しているのを目にしてから、優等生を演じる畑中は何かと彼を気に掛けるようになっていた。その関係は大人になってからも続き、畑中もヤクザとなり裏稼業に向いていない城田を補佐するようになるが、若頭にハメられて組から追われることに……。
雨に打たれて涙を隠す受けの城田の姿に畑中が目を奪われるところから始まるこの物語。優等生を演じ、どこか冷血なところもあった畑中がヤクザとしての素質を発揮して非情さも垣間見せるが、それもこれもすべては城田のため、ただ恋をしていたからだった……というのがグッときます! 一方で畑中が小指を詰めさせられそうになったときに城田がかばって見せたりと、共依存的な部分も。その時にできた傷はまるで涙が永遠に城田の顔に刻み込まれたようでどこか美しい……。欠けている部分を埋め合うように執着しあう二人の恋のゆくえは……!?
想いを伝えられないまま離れ離れになったふたりが、大人になってから再会。臆病な受けを攻めが追いかける、やさしい純愛物語です!
ゲイであることを隠して生きている奏は、雨の日に偶然入店した喫茶店で高校時代の親友・真城と再会します。積極的に連絡を取ろうとする真城に当時胸に秘めていた想いが再燃するも、恋に臆病な奏は逃げ腰。メッセージは返信できず、せっかくかかってきた電話も思わず切ってしまったり……。想い合っているのにうまくいかない、大人だけどゆっくり発展していくふたりの関係に、読みながらもだもだキュンキュンしてしまいます!
一見王子様然とした奏の弱さや純粋さにときめき、逃げる奏を追いかけまくる真城の情熱と男気に胸打たれる本作。天真爛漫そうに見えて実は家庭に問題を抱えている真城のほろ苦い過去などにも焦点が当てられ、ふたりの恋とともに人生の雨上がりも描かれます! ストーリーも胸キュンも味わいたい方にぜひ読んでいただきたい作品です♡
ある雨の日の運命的な出会い。実はそれが偶然ではなく必然だったとしたら――?鮮やかな青で描かれている表紙のように、やまない雨がそっと出会いを運んできてくれるような、そんな心温まる作品です。
教師をしている雨宮は、軒下で雨宿りをしていた成瀬と出会います。ずっと好きだったあの人の面影を持つ成瀬をついつい家に招き入れてしまう雨宮ですが、そこからふたりの距離が急接近して……。
好きだった人を忘れられずにいる、健気でひたむきな雨宮の孤独や、感情の揺れが丁寧に描かれているので、読んでいるとつい感情移入してしまいます。成瀬とは10歳も年が離れている雨宮ですが、そんなこと関係なく「可愛い」と思わせてしまうほどの魅力に、読者の心も奪われます。あの抱きしめたくなる儚さや恥じらうときの可愛さは、雨宮にしか出せません……! しかし、そんな過去から踏み出せなかった雨宮の心を救ってくれた成瀬にはある秘密が。ぜひその秘密は本編で確かめてみてください!
「正しいとは?」をテーマにした3編を収録する本作。表題作は自殺した青年の真意をめぐる切ない物語です。
兄さんが好きだった──。自殺した青年の部屋から1枚のメモを発見した刑事の結城。現場に駆け付けた「兄」里村を傷つけまいと咄嗟にメモを隠しますが、死の原因を探る里村を放っておけず、真相解明に付き合うことに……。「男同士で寝るくらい、死ぬほどのことじゃない」真実に迫った里村が弟の気持ちを理解するために結城と寝ようとするシーンが特に印象的。「他人とできても弟とはできない」と結城に言われてもなお、自責の念に駆られる里村には胸がグッと苦しくなりました……。事件当日、そして里村が真相に迫った夜、悲しみややるせなさを表すかのように降っていた雨。その雨が「明け方」に止む意味をぜひ噛み締めてください。
公正の象徴である裁判所職員が「どうすることが正しかったのか」と思い悩み、「正しくありたい」と願う刑事が嘘をつく。この哲学的なストーリー、クセになりますよ!
「男性の多くが初恋相手を神聖視している」というのは有名な話ですが、本作の主人公・久我もそのひとり。会社倒産と家庭崩壊。絶望の淵に立たされた久我が降りしきる雨の中思い出したのは、初恋の男・半田のことでした。「もう一度会いたい」強い想いに駆られた久我は、半田の居場所を突き止め、30年ぶりの再会を果たしますが……?
お人好しで真面目な久我、そして人生への希望を捨てて生きる半田。昭和の情緒漂うストリップ劇場を舞台に進む物語は、見た目や環境が変わろうとも「大切に思う気持ちは変わらない」という事実を読者に突きつけます。まっすぐ真摯な久我の姿に心を揺さぶられる半田の描写も印象的で、久我への想いを笑顔で誤魔化しながら語るシーンは必見です。また、当て馬も含め登場人物全員が人間臭くて味わい深い点も本作の魅力のひとつです。
人生に絶望した冒頭、初恋の思い出の中、そしてラスト。3度降る雨の意味とは? 30年越しの初恋の始まりを示唆する、雨上がりの表紙にも注目です!
「雨」がテーマとだけあってシリアスな雰囲気の漂う作品が多く見受けられる特集でした。しかし「止まない雨はない」という言葉があるように、どの作品も「晴れの訪れ」を想起させる展開になっているように感じます! また、読みながら雨の意味を考えるのもオツなもの。ぜひ皆さんもお手持ちのBL作品の中から「雨の描写」を探してみてはいかがでしょうか。
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