時は大正――
クラシカル、レトロ、ノスタルジック、和洋折衷……。はい、今これらの単語にピンときた方、ぜひ今回の特集をチェックしてください!! 恒例のシーモア限定特集、本日のお品書きは「大正ロマン」でございます。
大正といえば、庶民が様々な運動を通じて社会を変えていった時代であり、海外から知識や文化が導入され生活様式が大きく変化した時代でもあります。古き良き日本の原風景のなかに混ざる、目新しいモノの数々。恋愛描写はもちろんのこと、ぜひ背景や小物、セリフ回しなどにも注目して楽しんで頂ければと思います!
クールビューティーな受け・周と、仕事もせずのらりくらり生きる坊ちゃん・龍彦が、遊び心で催眠術を試すところから物語はスタート。龍彦が周に催眠術をかけ、「イクな」「もう我慢をしない」などと、うっかり口にしてしまうと、周の様子が変化して……!?
サクッと読める催眠術系のえっちな作品かと思いきや、ズーンと重く胸が締め付けられる甘く切ないBLコミックスです!! 受けの周が、とにかくギャップ萌えの塊! 黒猫のように人には懐かず、限られた相手にのみ執着する。いつもは素っ気ないのに、きっかけがあると燃立つ情愛をチラリと見せる。一方、龍彦はあくまでも友人として見ており、女性との話や兵役志願の話も出てきて……、大正時代のアレコレをギュッとつめた世界観や、なんとも言えない不思議な雰囲気が魅力。そしてメインCPの関係が、一筋縄ではいかない切ないストーリーもカシオ先生ワールド全開で、読み応えのある一冊です!
情緒あふれる愛の言葉を堪能したい方にオススメなのがコチラの作品です!
海軍少尉の手塚と、彼の弟の担任で英語教師の糸井。教師と父兄として出会ったふたりが、逢瀬を重ねるたびに思いを募らせていきます。ゆっくりと確かに育てていくふたりの愛情にキュンキュンが止まりません! 出会いから意識しまくりなふたりですが、「即告白!」とはならないのが本作の味わい深いところ。まずはお互いを知るところから始めるという、じれじれな距離感が甘酸っぱいんです! かと思えば、逃げ腰の糸井を「あなたと想いを交わしたい」と力強く口説く手塚の色っぽさに大人の魅力も感じて……!
年下なのに余裕のある手塚に振り回されるウブな糸井という、木下けい子先生らしいカップルに、大正ロマンの硬派な世界観が絶妙にマッチ! 純愛でありながらセリフの節々に色気を感じる、ワードセンスあふれた一冊です♪
進学のために上京した清が出会ったのは、大きな屋敷に住む異国人風の男・尾崎。書生として清を屋敷に迎え入れてくれた尾崎は、その外見の美しさとは裏腹にものぐさを極めたような人物でした。そんなある日、清は尾崎から生えるもふもふの耳と4本の尻尾を目撃!実は尾崎は長い年月を生きる妖狐だったのです……!
表情豊かではない尾崎ですが、その耳と尻尾はとっても素直! 落ち着かない時など、顔は通常通りなのに尻尾がそわそわとしきりに揺れている様子はとても可愛いらしくほっこりします。また、受けの清はとても真面目で少々変わりもの。妖狐の尾崎に怯えるどころかその生態に興味津々で前のめりになったり、物事に真っ直ぐぶつかって行く男前な性格の持ち主。詰め襟のシャツに袴、学生帽にマント、和装……このワードに食指が動いた方は必見です!
大正時代の雰囲気を感じられる、蒸気機関車での移動や和と洋が融合した街並みはノスタルジックかつファンタジーな世界に読者を誘います。是非ふたりの恋に癒されて下さい!
大学入学のため、とある大きな屋敷に下宿することになった明文は、ある日言いつけを破って辿り着いた薔薇園で、息をのむほど美しい美青年と出会います。謎めいた彼との逢瀬を重ねていくうちに、彼の正体を知り……。
曰く付きの大きな屋敷と、打ち捨てられた薔薇園、そこにたたずむ美しい魔性の青年。美少年モノ好きにはたまらないシチュエーションです!! 特に、魔性の青年・有里がまっすぐな青年・明文を誘惑してカラダの欲望に溺れさせようとするところは、雰囲気満点! ふたりの逢引を禁止された明文が、薔薇の枝に手紙を結んで文通をするところが古風で奥ゆかしい……。
明文が有里を陽の当たるところに連れ出そうとするも、有里の秘密を知ってしまい……。屋敷に閉じ込められた美青年の秘密とは、屋敷の女主人の思いとは……、そして秘密を知った明文はどうするのか!? 意外性のある展開とふたりの恋の行く末を最後まで見届けてください! 番外の未来編もお見逃しなく!
「大正浪漫」というワードがピッタリすぎる雪路凹子先生の耽美なイラストレーションにまずは注目です! とにかくすべてのページが美しすぎる……。 受けの一が、「睫毛バサッ! 唇トゥルトゥル!」のとんでもない美少年で、病弱なことも相まった儚く妖しげな雰囲気がたまりません♪ 弟の懸次郎との「飼い主」と「犬」という歪んだ関係、美しき父に対する執着と、ガチガチの血縁BLという濃厚な背徳感にドキドキの連続です……! また学校シーンにも注目して頂きたく! 制服がお耽美で、大正浪漫の醍醐味のひとつである学帽&マントももちろん拝めます!言葉遣い、重厚な建物にも近代文学のような趣を感じます。懸次郎の守備能力がどこでも発動するところも可愛かったです。
幼い少年時代のぼんやりとした危うい関係から描かれ、そこにある想いと欲望が芽生えていく過程が丁寧に描かれた本作。麗しさと読み応え、どちらも楽しめる一冊です。
舞踊の家に生まれた朱鷺が川辺で踊っていると、近所では見ない顔の男がこちらをジッと見つめている……その視線に気を取られて川に落ちた朱鷺。彼を助けたのは、こちらを見つめていた張本人・隆也で……。
受けの朱鷺は踊っているときこそとても魅力的で美しいのですが、口を開くとじゃじゃ馬そのもの! 性格はヤンチャで、隆也と出会った当初はとてもひねくれていました。しかし、隆也が男娼としての朱鷺を助けたことをきっかけに、ふたりの仲が深まっていきます。隆也の性格は男前かつスパダリ風味! 客に呼ばれる朱鷺に「行くな」と少し強引に引き止めちゃうところも、花丸満点! 隆也と朱鷺、境遇は違えどお互いの運命に逆らって、幸せになれるのでしょうか……!
大正時代が舞台なので和服だけではなく、レトロな洋服や帽子を着用したキャラたちも魅力♪ "鈴"がキーアイテムとなる本作。切ない&大正時代がお好きならあなたもハマるはず!
大正時代の大学寮……まだ男性同士の恋はご法度な時代。同室の大和と晶は付き合っていました。恋人同士のふたりは、人目を盗んでは薄い壁を気にしつつイチャイチャしていたのですが、新入生がひとり加わり……! ふたりで過ごす甘い時間が少なくなり我慢の毎日が始まる大和、しかし晶は気にしていない様子で!?
メインカップルは学生運動の代表人物・晶(受け)と、彼のサポート役・大和(攻め)。晶は黒髮のクール美人で、大和は色素が薄めのワンコ系イケメン! ふたりのキャラデザインの対比も推せます。学生服や和服はもちろんですが、他にも大正浪漫ファンにはたまらない用語や世界観が広がっています! 疲れた日に読んで癒されたい……、難しいこと抜きに読めるライトな味わいと、濃厚なラブシーン!! セクシーな表現に定評のあるときしば先生らしく、激しさと甘々が融合した心ときめくえっちも満載です。 和服がはだけるシーンと、学生運動でキリッとしたギャップがたまりません!
男娼と画家、そしてそれを取り巻く人々。独特のタッチで描かれる耽美な世界観がクセになる一冊です!
娼婦の息子で男娼館に預けられた少年・夢二が主人公。戦前で男娼モノ……と聞くと、シリアスな雰囲気に終始するのかと思いきや、夢二という名前が示すように、ところどころに「夢」が散りばめられているような印象を受けます。水揚げ相手となった画家・奥村に自分の絵を見てもらいたい。あの人に認めてもらいたい。夢二という男娼の原動力はただその一点で、その純粋さ、ひたむきさに心を打たれます。そんな奥村に向けられた、恋情のような憧れのような感情がどう帰結していくのかはぜひ皆さまご自身で確かめて頂きたいのですが、結末はともかく、夢二の一途な側面にじわりと目頭が熱くなりました。年月を経て、夢二はあるものと思わぬ出会いを果たすのですが、そこで読者はタイトルの意味に気付くはず。
仄暗さと明るさが入り混じる時代に生きた、ひとりの男娼の行く末は……?
大正ロマン特集、いかがでしたか?
現代人からすれば、当然ですが体験したことのない未知の世界。けれど、なぜか心が少し切なくなるようなノスタルジーを覚えるという……。この不思議な感覚は、大正ロマンBLでしか味わえない格別なものだと思っております!
現代よりも人々の生活に様々な制約があった時代に同性同士で恋に落ちるということ……その難しさを改めて知ることができた特集でした。
\スタッ腐★イチ推し特集/