ふわふわ、もふもふ
「ファンシー」と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?スタッ腐はまず最初に、子ども向けの可愛らしいデザイン(あるいはキャラクター)の施された「ファンシーグッズ」が頭に浮かびました。「ファンシー」とは本来、「幻想的、空想的」という意味の言葉で、日本では前述したような「子ども向けの」というニュアンスで使用されることが多いようです。
空想的で幻想的……たとえるなら童話みたいな世界観。人間にこだわらず、動物や妖精など様々なキャラクターが作品を彩って……。今回扱うのは、そんな絵本のようなストーリーが楽しめる8作品。癒しと温かさ、そしてちょっぴり切なさも入り混じるストーリーを心ゆくまでお楽しみください。
6歳になるジュンくんはお父さんとお母さんといつも一緒。大好きなノエルくんや怖いお兄さんのレイ、ほかにもたくさんのお友達……どこにでもある楽しい日常を過ごしています。そう、“お母さん”が鳥の着ぐるみを着ていること以外は!何といってもインパクト大の鳥の着ぐるみのビジュアルに度肝を抜かれると思いますが、ページをめくってみると、とっても温かくてほのぼのした世界が広がっているんです!誰も何も否定しない優しい世界、だけどみんなそれが完璧じゃないことはわかっている一方で、今だけは優しい世界を作りたいという思いに満ち溢れている……。家族が欲しかった男の子、赤ちゃんを大事にしてあげたかった男の子が本当にジュンを大切に育てているところにグッときます!ほんわかしつつ美しい絵柄にも注目してほしいですね。
ジュンの視点でほのぼのな日常を楽しむもよし、大人組の優しいけどちょっとずるくてしっとり切ない世界を楽しむもよし、読むたびに味が出るBL童話でした。
自家製のミルクで食品店を営む牛のモー太郎、カレイの煮つけで精通を迎えた鈴木、刺青が入っている彼氏のためにふたりだけの温泉を掘る鯛、美男子に恋するモブおじさん……。およそ一般人には想像できない、シュールを越えた世界観がめちゃくちゃクセになる!ヤバいとしか形容できないのは、きっと我々の語彙力が今日もみぞれ先生に追い付いていないからです。ぶっとび過ぎてニヤニヤしてしまうのに、「こんなにおもしろい人がこの世に存在するのか……」という謎の敗北感を感じざるを得ません。
そんなジワる世界がつまった短編集の中でも、『カゴ』は「親に売られる子ども」というシリアスな要素がありながら、父親のビジュアルや要所要所のネタコマでコミカルに仕上げられており、本物の才能を感じてしまいます。想像の斜め上の上をいく作品ですが、作り上げられたファンタジックな世界の中で巻き起こるBたちのLがあり、さらにエロまである他に例を見ない一冊です!
様々な種族が平和に暮らすニィーニの森を舞台に、3組のカップルの恋を切なく描いた本作品。SHOOWA先生の才能に感服せざるを得ない人外ファンタジーです!
カエル×ブタをテーマにした第1話。はじめは全く意味の分からなかった展開も、後半部分を読めば「そういうことか!」と納得できるのでご安心を。第1話で当て馬キャラだった謎の黒髪イケメン・オーウェンが主人公となる第3話。自身のルーツを探るためウサギの森を訪ねたオーウェンとそこで出会ったウサギのタドタとの話が第1話に繋がっていきます。個人的にとても気に入ったのは、人間になった狼・ウルフと褐色ケモ耳少年・ココの切なすぎる結びつきを描く第2話。自由奔放なココを見守るウルフの深すぎる愛情に、涙腺が決壊します……。自然の摂理には逆らえないこと、身近な人の愛情こそ気付きにくいこと……未練と愛の入り混じったウルフのモノローグに涙が止まりませんでした。
人外だとかBLだとか、そういったモノを超えて「共に生きること」について深く考えさせられる一作でした。
拾ったフィギュアが色素薄めのイケメンに変身!?しかも邪気を取り除くにはセックスが必要だと強引に迫ってきて……!?手のひらサイズの妖精バージョンとイケメンバージョン、2パターンの容姿がおいしすぎる作品です!
とにかく「いやしのようせいさん」が可愛すぎる……!2頭身のまんまるフォルムにぴょこんとついた羽。なんだこのプリティーでキュートでラブリーな生き物は!謎の妖精・エイルを警察に通報しようとする常識人の智紀。そんな彼を幸せにしたくて、何度怒られても傍にいようとするエイルが可愛いです。セックスなしでどうにか智紀を幸せにしようと奮闘する姿が何とも健気でキュンキュンが止まりません。一方、大きくなったバージョンのエイルは色気のある筋肉質なイケメン♡このギャップにハマらないわけがありません!
だんだん絆されていく智紀の気持ちにうんうんと頷く読者を裏切るかのように、ふたりはこの後引き裂かれてしまい……。お互いの気持ちに気づいたふたりがとる行動から目が離せません!
男の娘……それは女装男子とは少し違った魅力を持つ属性。たとえとんでもない力持ちだとしても、クマを素手で倒せるくらい強くても、「かっこいい旦那様に出会いたい!自分だけを好きになってほしい!!」という乙女心をそなえたキュートさ……それが「男の娘」の魅力なのです!
本作の主人公・桃矢くんもまた、突然落ちてきた恋に翻弄されるピュアな男の娘。お相手の孫悟空は一見粗野な暴れん坊に見えて恩に厚く、ふとした時に元王様らしいカリスマ溢れる一面を見せるスパダリ攻めなのです♡悟空のギャップに振り回されながらどんどんメロメロになっていく桃矢くんがもう~可愛くてかわいくて‼いつもと違う衣装の悟空にぽーっと見とれてしまったり、距離の近さに「ドキドキしちゃうじゃん!」と真っ赤になったり、くるくる変わる表情と健気さがたまりません♡
人間と妖、はたしてふたりの関係はこの先どうなるのか!?ドタバタであまあまな恋の行方、必見です!
「ファンシー」は、動物愛好を指す言葉でもあるとのこと。その意味に相応しいのがこの作品!ちょっと不思議、だけどどこかで存在してほしいと願ってしまうような、猫と人間カップルの非日常な日常オムニバスです。
"最高"ポイントは数あれど、何にしても野良猫ズの可愛さには思わず破顔してしまうはず。2匹の猫が草むらでお喋りしたり、ご主人の膝の上を取り合ってじゃれたり……リアルすぎずデフォルメすぎない、絶妙な描写。小椋ムク先生の絶巧に恐れ入ります。健気にご主人を想う姿だけでも「ネコチャン~♡」と癒しを貰えるのですが、エロなしでもしっかりとBがLしているのが更なる"最高"ポイントです。人間の姿に変身してもつい出てしまう猫の挨拶「鼻スリスリ」が尊すぎる……!触れるか触れないかくらいの接触ってどうしてこんなにも昂るのでしょう。
天日干ししたばかりのお布団のようにぽかぽかした愛溢れる1冊、ぜひご堪能ください!
まるで絵本のよう……♡こんなに心が温まってなおかつ切ないBL作品、ほかにありません!
物語の舞台はドイツの画材屋さん。お店の外装には金髪の天使・ユリウスと黒髪の天使・マリオンが描かれていて、夜になると天使たちは壁の外に出ることができるのです。夜になるたびに壁の外に出て散歩するふたり。しかし、夜明け前には戻らないと壁から弾かれ、消えてしまうという決まりがあって……。
天使たちがそれぞれ人に出会って恋をしていくのですが、正体を明かすこともできず、短い逢瀬を大切に重ねるさまが何とも言えず胸を締め付けます。ユリウスは自分を描いてくれた絵描きのロレンツに恋をするも、ロレンツは仕事のため遠くの街へ行かなくてはならなくなります。その距離はとても一晩で帰ってこれるものではありません。そのとき、ユリウスがした決断とは……!ユリウスとマリオンの、切なくやさしい恋の行方をぜひ見守ってください!
ワンパンチで勇者を倒してしまう最強魔王・ウィスペド。不老不死な身体の持ち主で、誰とも同じ時を過ごせない孤独や、何もしていないのに魔王というだけで勇者に襲われる理不尽さを抱えながら、人間界から送られてくる勇者を迎え撃つ日々を過ごしています。そんなある日、勇者と名乗る男が丸腰で訪ねてきて……。
勇者・トゥルーは魔王討伐をするつもりはなく、「魔王城に住まわせてもらいにきた!」というアホの子。他の勇者たちとは違い、天真爛漫にウィスペドに懐きまくるワンコな男の子で、見ているだけで心が癒されます♡対するウィスペドは基本ポーカーフェイスで非情に見える容貌。しかし、心根が誰よりも優しいんです!純粋なトゥルーと接するようになり、次第にウィスペドが孤独から抜け出していく姿には、じ~んとこみ上げてくるものがあります……。
魔王様と勇者のふれあいに和み、ふたりの孤独に涙する、心揺さぶるファンシーBLです!
いかがでしたか?心がホッと温かくなるもの、ふわりとした世界の中にひと匙の切なさを含むもの……皆さまの琴線に触れる作品はありましたか?
「ファンシー」という特性上、人外作品が大半を占める特集となりましたが、単なる人外特集とは異なり、幻想的な世界観がより際立っていたように思います。現実でも童話や絵本から学ぶことが多いように、今回の特集もググッと刺さるシーンがたくさんありました。心が荒んだ時にこそ、どうぞ何度も読み返してみてくださいね。
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