正直に言います。この作品、見くびってました。乙女系な絵柄に、デビューコミックスということもあり軽い気持ちで読みはじめたのですが、謝りたいくらい面白かったです。とにかく登場人物たちの設定や心の動きひとつひとつに理由があって、説得力が半端ない！
物語は上京してひっそりとオタクライフを楽しむ大学生・育が、歩道橋のうえの幽霊に同人誌を拾ってもらうところからはじまります。瀬尾未森と名乗るリア充感満載のその幽霊は、いつのまにか育の部屋で暮らすようになるのですが、毎晩23時45分になると無意識のうちに歩道橋へ向かい、自分の死んだ瞬間を繰り返しているのでした。そんな未森を毎回引き止めながら、育は記憶のない未森にかわって彼の死の謎を追い始めます。そしてそんな育もまた、自分自身のあるトラウマと向き合うことに......。
じんわりと心に染み入る、切なくて優しいそんなラブストーリーです。こういう作品に出会えるからBLってやめられないんだよな......。そう思わざるを得ない一作でした！

《あらすじ》
上京してふた月、いつも歩道橋でぼんやりしている幽霊を気にしつつも無視していたが、落とした同人誌を届けてもらったことがきっかけで部屋に棲みつかれてしまう。同居を始めて気づいたのは、未森が毎日23時45分にあの歩道橋で自分の死んだ瞬間をくり返していることだった――。

家に帰ったら知らない男が！生き霊と名乗るその男・シロサキを、コンビニ店長のコウスケはしばらく家においてあげることに。この流れから分かる通り、世話焼きお兄ちゃんのような面倒見の良さを持っていて、とにかくいい子なコウスケ。クールで少し意地悪なシロサキとの相性も良く、お互いゲイと知り、人間と霊体ながらも順調に仲を深めていくふたりの様子がとても微笑ましいです......。しかし「このまま付き合うのかな？」と思いきやコウスケには学生時代からの彼氏の存在が！正体不明だったシロサキの元の職業や本体の行方、シロサキはどうしてコウスケの部屋に現れたのか......徐々に明らかになる謎が心地よく、ふたりの感情が高まっていく様子がアツい！
終盤の「この涙ひっこむくらいのキス...してくれよ」というコウスケの台詞は必見です！少しファンタジックなお話にグイグイ引き込まれ、ラストは絶対に幸せで包まれるはずです。心が穏やかになる作品をお探しの方はぜひ！

《あらすじ》
コンビニ店長のコウスケが仕事を終えて帰ると、誰もいないはずの部屋に、包帯だらけの見知らぬ男が―――!!驚いて気絶してしまうが、目が覚めても男は依然、目の前に。あまつさえ〈生き霊〉を自称するその男・シロサキは、そのまま居座るらしい!?

「自分以外の人間の顔がただの点と線にしか見えないってなに！？」と思ったら、本当に点と線だった......。しかし、読者の衝撃はそれに留まりません。普通の学園モノかと思いきや、なぜか血だらけで戦っている士官養成コースの通称白薔薇騎士・紫ノ宮が、主人公の雪村に「お前の騎士になる」宣言。それに加えて突然クラスの生徒が全員殺されるし、〈学校〉は生徒の敵らしいし、森に動く呪いの木があるし、そこに名前が書かれると死んでしまうらしいし、悪夢を食べてくれる可愛いバクがいるし、なんなんだこの世界観は！一瞬たりとも気が抜けず読みすすめる手がとまらない!!そして物語は、雪村と紫ノ宮の過去をめぐって思いもよらない展開を迎えて......！？ARUKU先生の奇才ぶりをここまで痛感されせられる作品があっただろうか......。
怒涛の展開すぎて先がまったく読めない......でもそこがイイ！唯一無二のオリジナリティに、独特のギャグセンスがきらりと光る、前代未聞のファンタジー。全力でオススメします！

《あらすじ》
自分以外の人間の顔がただの点と線にしか見えない雪村。だが、新しく寮の同室となった紫ノ宮の顔はなぜか判別できたことに驚く。学校では怪しげな魔物が蠢き生徒が何人か消えたが教師も同級生も見て見ぬふり。訝しむ雪村に、紫ノ宮は｢お前を守る騎士になる｣と宣言するのだが！？

「霊感が強い＝霊的なものを怖がらない」というイメージを払拭する重度の怖がり男子、それが本作の晃。その能力を買われてオカルト作家・士郎の助手として心霊スポット取材に同行する日々を送るのですが、とにかくビビり方が半端ない!!「叫ぶ・泣く・腰を抜かす」と、ひたすら怯えまくる様子に、士郎が可哀想を通り越してもはや可愛いという感情を抱いてしまうのも納得です。しかも怖がりな上に流されやすいときた!!ふたりのカラダの関係も晃が流されて始まったようなものですし、ある夜の取材では「セックスのパワーは霊を寄せ付けない」なんて噂を信じてエッチなことをされそうになったり......!! そんなふたりですが、士郎のある発言から関係がギクシャクし始めます。想いあっているのに歯車が噛み合わない展開はBLの醍醐味！憑依された士郎とのエッチ、幽体離脱などオカルト要素も楽しみつつ、最後はあま～く収まります♡
エッチだけど優しい攻めと怖がり男子の受け。この組み合わせが好きな方はぜひどうぞ！

《あらすじ》
霊感ゼロのオカルトライター士郎と、怖がりで霊感が強い助手の晃。
士郎は取材先の心霊スポットで怯える晃の姿に興奮し、Hな事をしかけてくる。
晃は強引だが優しい士郎に心惹かれていく。
ある日、自分が見えているものを士郎が信じていない事にショックを受けた士郎は...

生きることに意味を見出せないが、かと言って積極的に死ぬ勇気もない。意味もなく毎日を過ごす幸紀の元に舞い降りたのは生意気だけどなぜか憎めない天使。自分は何者なのか、何のために現れたのか、一切の記憶を失っていた天使を住まわせているうちに、ささくれていた幸紀の心は解れていきます。互いの足りないものを補い合う関係から、いつしか愛という感情が溢れてやまないものへ。お世辞でも幸せな人生を歩んできたとは言えない彼らがこのままずっと一緒にいれますように！そう願わずにはいられません。しかし、徐々に明らかになる天使の正体に不穏な空気が......。伏線の回収はお見事としか言いようがありません。なんてことないシーンのなんてことないセリフにもちゃんと意味があって......
はらだ先生が鬼才と呼ばれる所以が分かるような気がします。
人のやさしさ、温かさが心に触れたとき、同時に頬を伝う涙。視界がぼやけた状態で最後の描き下ろしを読むことをオススメします。

《あらすじ》
BL臨界点！人生投げ気味のヤカラ男×感情シェア天使――。人生の光と闇を紡ぐ、はらだ史上、最も優しい物語。趣味なし、友人なし、恋人なし。生きる価値、なし。惰性で毎日を送っていたコンビニ店員の幸紀（30代）は、うっかりチンピラに刺され瀕死になった折、遠のく意識のなかで、真っ白い羽の美しい「天使」を見た―――。

すでに表紙の花火をしている様子からも、儚さや切なさが伝わってきますが、最初に忠告しておきます。この作品、涙なしには読めません!!暮田マキネ先生初の短編集ということで、お話は短めですがその中に全てがつぎ込まれています。
ストーリーは亡くなってしまった幼馴染・奈津の目線で展開していきます。陽のために離れなければいけないことは分かっていても「傍にいたい」という想いが、愛しそうに陽を見つめる視線から痛いほど伝わってきます。ずっと冷静を装っていた奈津が、陽を突き放したとき初めて見せる、溢れ出る涙に読んでいるこちらも涙が止まりません！「お願いだから時間を巻き戻してあげて」と願わずにはいられませんが、奈津の思いの分、これから陽が幸せになってくれることをただただ祈ります。
30ページという短い作品に込められたふたりの繊細な感情を、細かいところまで大切に読んでみてください。ハピエンの作品は多くないですが、どの作品も切ない中に愛情が溢れていて、読後もしばらく余韻が抜けません！

《あらすじ》
「高校出たらさ、二人で暮らさね?」陽(はる)と奈津(なつ)は物心つく前から、何をするにもどこへ行くにも二人一緒だった。ずっと、こんな日々が続くと信じていたのに―――君がいない夏がくる

『ROMEO』シリーズでもそのファンタジックな世界観で読者を虜にするわたなべあじあ先生の和風ファンタジー！とっても妖しく艶めいた表紙が印象的なこちらの作品は、BLと奇譚の融合を成し遂げたまさに怪奇BLの最高峰と言っても過言ではありません。
和服を着た色っぽい道具屋の主人・梟をはじめとして、ちょっと抜けた性格で梟に翻弄されている千足、黒猫で人の姿にもなる黒蜜など魅力的な登場人物がいっぱいです。話ごとにゲストキャラクターとして道具屋を訪れる人の、願いは何なのか、そのひとに隠された謎は......？物語が進むにつれて解き明かされていきます。話ごとに結末を補足するようなちびキャラ漫画の可愛さはもちろんですが、後日譚的要素もあり、可愛いのに泣けてくること間違いなし。
そして注目なのが、梟と鴉(千足)、天城の三角関係です。鴉が目覚め、梟と真に愛し合えるのはこの世が滅んだ時だけ......それでもなお、お互いを求め続けるふたりが切なかったです。

《あらすじ》
その店には、切なる願いを抱えた者が辿り着く――。妖艶にして美貌の道具屋の主人･梟のもとを訪れる、『約束の小指を求める男』や『兄が産んだ子を抱いた男』、『主の骨を銜えた仔狐』らが紡ぐ恋の秘話。

冒頭から展開されるイケメンのエロいオ○ニーシーンは幽霊の仕業で、しかもオナネタは謎のおじさん......。何とも意味深かつ背徳的なオープニングにドキドキが止まりません。
攻めの千真、幽霊らしからぬ爽やかさです。常時スーツ姿でいつも笑顔。料理上手でオカンっぽいところも高得点な年上男子。一方受けの颯大は、意地っ張りなツンツン男子で、中学の時に誘拐犯にレ○プされそうになったという過去を持っています。トラウマに苦しみつつも、誘拐された時に与えられた快楽を忘れられない......。だからオ○ニーシーンにおじさんが出てきた、と。そして犯罪者相手に欲情してしまうことの理由もまた切なくて......。そんな颯大の過去を上書きしようとする千真が本当にもうオトナの男性の良さを全部持っていてずるい～！「いつ消えるか分からないから」「俺の痕君に遺したくて」このセリフ回し天才か～!!普段ニコニコな千真がエッチの時に見せるオスの表情がたまりませんでした。
幽霊の千真と生きている颯大、ふたりの恋の結末はぜひご自身の目でお確かめ下さい！

《あらすじ》
寂しい夜。隣には幽霊――。事故に遭って幽霊になった青年・西之千真(にしのかずま)は、なんの接点もない大学生・楠原颯大(くすはらそうた)にだけ姿が見える。颯大は幼い頃誘拐犯に犯されそうになったことがあり、そのトラウマに今も囚われていた...