BLの中でも特に人気なのが健気受という属性。
どんなに酷いことをされたり、つらい境遇に陥っても一途な気持ちを捨てない受たちに、我々は何度涙したことでしょうか。そんな健気属性を突き詰めていくと、いつか出会ってしまうのが「不憫受」。
見ているのが可哀想なレベルのアレコレに、ページをめくる手が思わず止まってしまうという作品がこの世には存在します。
今回特集するのは、とにかく受が可哀想な8作品! 後半にいくにつれて不憫度が増していきますので、ハンカチ必須&精神的に安定している時に読んで頂きたい!!
好きだけどいじめちゃう... 最高峰のド健気がここに!
好きな子ほどいじめたい。小学生にありがちなコレを大学生にもなってやってしまう攻と、そんな攻の言いなり状態な健気受が楽しめる作品がこちら。
ハメ撮りは序の口、童貞の友人の練習台に恋人をあてがってのプレイ、窓を開けたまま拘束して玩具責めなどエッチのバリエーションがとにかく豊富。喘ぎが好きな方にはたまらない、淫乱な受のトロ顔が楽しめます! 攻の秋彦は、恋人を泣かせて、それでいて自分だけが許されたいという厄介な性癖持ち。受の直哉は心底秋彦に惚れているせいで彼の言うことには逆らえません。「変化がないと俺飽きちゃうかも」なんてセリフを言われたら、例えイヤでも断れるわけがない! どんなにいじめられても秋彦大好きオーラがギュンギュンな直哉が健気です。そんな意地悪な秋彦ですが、優しくできたら良いのにと常々思っているところが憎めません。物語後半で直哉の家庭問題が浮き彫りになり、結末もそこに絡めたものになるのですが、「こういう終わり方も面白い!」と新鮮な気持ちになりました。
不憫受というテーマながら、優しく温かい気持ちになれる作品でした。
NTR好きな恋人とのアブノーマルでエロエロすぎる日々...
他人に理解してもらえない性癖のひとつ、NTR(寝取られ)。他人に恋人を抱かせて興奮するという特殊性癖を持つ亮太と、そんな恋人の無茶振りに毎度付き合わされる直が主人公です。仕事帰りの直を他人に襲わせてからのお咎めエッチに、「ナンパで男を捕まえて抱かれてきて」だの「職場(=小学校)でオ●ニー動画撮ってこい」だの、とにかく要求がメチャクチャ! ありえない行動の数々にも関わらず、お願いされると断れない......。そんな中、ふと本当に寝取られたら恋人はどんな反応をするのだろうと思ってしまった直。初めて亮太に隠れて男と会ってしまい......!? 浮気とも言えるこの行為は最悪のバレ方をするのですが、そこにもまた裏がありまして...思わず手に汗握りました!!
亮太に振り回されまくりな直ではありますが、結局のところお互いしか見えていない相思相愛カップルなふたり。
結果的に当て馬になってしまったタカナシくん(この子絶対いい子!)のスピンオフが読みたいです!!
美人上司×体育会系M!開発過程がシコすぎる社会人BL
強制嘔吐によってMの素質が開花した体育会系受。ニッチな性癖をついてくる内容に読む前から期待が高まりますね~!
歓迎会で酔い潰れた新入社員の花田(体育会系)を美人顔の上司・蝶野が介抱して......という定番の萌えシチュから始まる本作。思うように吐けない花田の口に指を突っ込む蝶野、嘔吐しながらなぜか勃起している花田と、私の好きな展開に♡ この出来事をきっかけに花田はあらゆる快楽を教え込まれてメスイキするまでになり......。そう、本作はガタイのイイ男が受なのです!! 倉庫での処女喪失、怒濤の尿道責めなど花田のトロ顔をたっぷり楽しめるHシーンはもちろんなのですが、蝶野の優しさや男らしさ、そして意外な過去などにも注目してほしい!!特に蝶野が元来Sではないという事実は衝撃でした。「自分なんかに付き合わせて申し訳ない」という想いを抱えて過ごす花田と、少しでも花田を悦ばせてやりたいと思う蝶野。そんなふたりのすれ違いぶりに悶えること間違いなし!
美人に開発される純情M。この言葉にピンときた方、今がチャンス! ぜひ読んでみてくださいね。
家族を亡くした男と愛を知らない男のドラマティック身代わりラブ
家族の愛を知ることなくその日暮らしをしている男がひとり。トラブルに巻き込まれ、倒れていたところを拾ってくれたのが薫という青年です。傷だらけの男を亡き弟だと思い込み、一方的に「護」と呼ぶ薫......病みすぎていて痛々しいです。普通だったら逃げ出してもいいくらいなのに、主人公は敢えて「護」として過ごすことを決意。ここにいれば欲しくてたまらなかった愛情を感じられるから、と。親から虐待を受けた主人公と両親も弟も亡くした薫。孤独という共通点しかないふたりですが、共に過ごす時間は優しさで満ちているという不思議。しかし、あくまでそれは偽りの愛。いつしか「護」ではなく自分自身を見てほしいと願うようになる主人公の心情がとにかく切なかったです。本当の家族という高い高い壁を主人公と薫がどう乗り越えたのかがポイントですね。そして、実は主人公の名前が終盤まで一切出てこないんです! 敢えて名前を出さないことで結末がより一層ドラマティックなものになるという、エンゾウ先生流のテクニックでしょう!
恋愛だけでなく家族愛にも触れられる感動作。この機会にお試しください。
逃げることは許されない!?
2009年刊行の同名小説のコミカライズ版とあり、原作ファンからも注目を集めていた本作ですが、こちらもなかなかに攻がひどいヤツでした!
典型的俺様タイプのホストクラブ経営者・将嗣が恐ろしいほどの執着心を向ける相手はクールビューティー系SE・千晶。大学時代に知り合い、圧倒的なカリスマ性を持つ将嗣に千晶は惹かれていくのですが、ある出来事をきっかけに強引に抱かれてしまい......。以降、10年にわたって千晶は将嗣のオモチャ状態に。「同棲してるし、恋人なのかな?」と思いきや、家に女を連れ込んで平気でヤるなど愛情があるとは思えない行為ばかり。こんな男捨てちゃえと思うのですが、千晶の様子を見ていると本当に将嗣に惚れているみたいなので余計に苦しくなりました......。諦めにも近い気持ちを抱き始めた千晶が転勤を理由に本当に将嗣のもとから逃げ出すことを決意するところまでが第1巻。それがバレて監禁という最悪の行為を将嗣がとるのが第2巻と、とにかくムカムカしつつも物語の展開から目が離せません! ボリュームたっぷりのエロも見どころです!
果たしてハッピーエンドで終われるのか、結末をお楽しみに!
オレサマ×従順ヤンキー!ダーク&バイオレンスな執着BL
──俺以外に縋るのは許さない。このキャッチに惹かれて読み始めて数分、軽い気持ちで手を出したことを激しく後悔した作品。心して読むことをおすすめします。
クズなヤンキー・大我が、学園キングであり幼馴染でもある理人の彼女に手を出してしまったことが事の発端。今まで散々甘やかしていた大我をお仕置きと称して強●するばかりか、これ以降、理人は事あるごとに大我を虐げるようになります。殴る蹴るは当たり前、ハメ撮り動画を流出させる、自身の取り巻きとの行為を強制するなど、ひたすら痛くてつらい......。こんなにも酷いことをされているのに、大我の頭の中にあるのは「理人くんに許されたい」「嫌われたくない」ということのみ。酷くしたり優しくしたりと、大我を精神・肉体ともに翻弄する理人ですが、その根幹にあるのは度を過ぎた執着愛で。大我のためなら肉親ですら手にかける恐ろしさよ......。
常人には理解できない狂気がもたらす結末を、正直、うまく消化できていません......! 共依存と歪んだ愛情の先に幸せはあるのか、どうぞご自身の目でお確かめください。
美人受への仕打ちが容赦ない!過去最高に心臓がやられる話題作!
自殺を図って昏睡状態に陥った受と、彼に寄り添う攻。衝撃的な始まり方をする本作は、今特集の中で最も心をやられるタイプの作品です。人間の心が破綻している攻と、難病持ちの母を抱えて懸命に貧困を生きる受。非の打ち所のない受を手に入れるためにあらゆる手段を使う攻は鬼畜で冷酷で下衆で最低な男。受をドン底まで落として自分に縋るように仕込む......怒りでページをすすめる指も震えます。身も心もズタボロ状態の受がとにかく哀れでした。中盤からは受による攻への復讐が始まるのですが、そんな中でも受を痛めつけ続ける容赦のなさ......。Hシーンは多いのですが、それを楽しむ余裕がないほど...「お願いだからもうやめて!」そう思うと同時に、この攻だけは絶対に許してはならないとまで思いました。けれど、最後はなんと攻を想って泣きました。救われた?救われない?そんな簡単な言葉で片付けられる軽い話ではありませんでしたが、それでも私は涙が出ました。本当に読み手の心をガシガシ掴む作品です、ぜひ多くの人に読んでもらいたいと思います!!
ただ男に愛されたかった... 性別と愛情について問いたい...
本作はトランスジェンダーの主人公の半生を綴る物語です。
1950年代のアメリカ。主人公はマリリン・モンローに憧れた少年・J。女顔負けの表情でマリリンになりきるJの妖艶な表情がとても印象的です。しかし、そんな彼の平穏な日々はある事件によって終わります。家族を失い、孤児院や寮制の名門校などを渡り歩くJですが、心のどこかにあるのは「自分がオカマだから家族を失ったのだ」という自責の念。普段はそれを表面に出さずに過ごす彼ですが、苦しい心境を露わにしたシーンではこちらまで胸が痛くなりました。女言葉を話し、化粧をして、男に愛されたいと願う。Jが自分のことをオカマと言うたびにその言葉の重さが胸にのしかかるハズです。
初恋相手のポールとの再会、歌い手時代の付き人・リタとの関係性など、話が進むにつれて明らかにされるドラマティックかつ衝撃的な展開に時間を忘れて作品にのめり込むこと請け合いです。犯罪レベルの性描写や心削られるシーンも多いですが、「性とは? 愛とは?」といった根幹に関わる問題を深く考える作品となりました。
いかがでしたか......?
記事を読むだけで精神が抉られたという方もいらっしゃるかもしれません。前半は比較的マイルドな(?)もの、ハッピーエンドが約束されたものが多かったのですが、後半はとにかく全体的に痛くてダークなものばかりになりました。心臓が強い方、受が可哀想なほど萌えてしまうという方、ぜひオススメの不憫受がありましたら教えてください!