ヤングマガジン(講談社)の特別増刊号・ヤングマガジンUSAが、アメリカ・ニューヨークで8月22日から行われる「ANIME NYC 2025」の紀伊國屋特設ブースで配布。北米17店舗の紀伊國屋でも配布される。
ヤングマガジンUSAの表紙には、「攻殻機動隊」で知られる士郎正宗の描き下ろしイラストを使用した。北米でも人気の「頭文字D」を手がけたしげの秀一や「惡の華」「血の轍」の押見修造、「となりの怪物くん」などの少女マンガで知られるろびこら19組による新作に加え、花沢健吾の「アンダーニンジャ」が掲載される。なお8月21日に開設されるヤングマガジンUSAの特設サイトと公式Xで、全作品が順次公開となる。
また掲載される新作のうち16作品を対象にした読者参加型の投票キャンペーンを、特設サイトと公式Xで実施。支持を集めた5作品が、ヤングマガジンと講談社のマンガアプリ「KMANGA」で日米同時連載される。結果発表は12月16日を予定。
ヤングマガジンUSAは、アメリカの読者に向けて企画・編集されたもの。SF、ダークホラー、サイバーパンクなど多様なジャンルを通じて、嘘や誇張のない人間のリアルを描くことをテーマとしている。コンセプトは「UN-filtered MANGA」。今回の発刊についてヤングマガジンUSAの編集長・白木英美氏は、「『AKIRA』や『攻殻機動隊』といった名作を世に送り出してきたヤングマガジンとして、次なる『AKIRA』を創出したいという想いもあります。創刊45周年という節目を迎えることもあり、その記念事業の一環として今回の北米向け増刊企画を実現する運びとなりました」とコメントしている。
ヤングマガジンUSA掲載作品
西尾上「Still You」
都留泰作「プロトコル・リュウグウ」
守熊杏梨「闇へ」
松本電池(原作)、西嶋慶大(漫画)「プレグナント」
岩井敬人「PROJECT METALLIA」
下川林「ゴッドマザー」
ろびこ「夕闇とかたわれ」
金藤澪「瀆神の騎士」
学慶人「BOYS RUN THE RIOT -INTRANSITION-」
OUGA「帯化」
板橋大祐「魔力枯れのダークエルフ」
里好「夜勤(Graveyard shift)」
我妻ひかり「この恋は変ですか?」
たかしげ宙(原作)、巽一文字(漫画)「THE LAST TERRAN」
石澤寛伎「降魔ーGOUMAー」
山田胡瓜「鬼鬼怪怪」
押見修造「ぼくとボブ・ディラン(と父)」 ※投票企画対象外
中山昌亮「静の杜」 ※投票企画対象外
しげの秀一「昴と彗星」 ※投票企画対象外
花沢健吾「アンダーニンジャ」 ※投票企画対象外
白木英美(ヤングマガジンUSA編集長)コメント
北米での企画を実施しようと思った理由
近年、世界的にマンガの需要が高まる中で、特に青年マンガの持つ深みや魅力を、より多くの方に届けたいと考えたのがきっかけです。『AKIRA』や『攻殻機動隊』といった名作を世に送り出してきたヤングマガジンとして、次なる『AKIRA』を創出したいという想いもあります。ちょうど本年が創刊45周年という節目を迎えることもあり、その記念事業の一環として今回の北米向け増刊企画を実現する運びとなりました。現在、海外市場では少年マンガが主流となっていますが、少年マンガでは描ききれないテーマや表現を含む青年マンガの可能性を、海外最大市場である北米の読者の皆さまにも届けたいと考えています。
ヤングマガジンとヤングマガジンUSAの違いやコンセプトの変化
日本版のヤングマガジンでは、殺し屋やドラッグといった刺激的な題材を扱う作品が多いのが特徴ですが、今回の北米向け増刊では、SFやダークファンタジーといったジャンルに重点を置いて構成しています。「アウトサイダーのための雑誌」というヤンマガらしさは踏襲しつつも、より国際的なスケールで共感されうる作品群を揃えました。世界観の広がりやテーマ性において、グローバル市場に響くラインナップを目指しています。
コンセプトの「UN-filtered MANGA」が生まれた経緯
広告代理店の方々とのディスカッションの中で、「フィルターばかりの世の中は、本当におもしろいか?」「人間の想像力にフィルターは必要か?」といった問いをいただきました。この考え方は、まさに青年誌が掲げてきた価値観と重なるものであり、非常に共感できるものでした。青年マンガは、夢だけでなく現実を描くメディアであり、人生の葛藤や痛み、社会への違和感といった“生々しい感情”を描くことができます。社会、時代、配慮ーーさまざまな「フィルター」へのアンチテーゼとして、この「UN-filtered MANGA」というコンセプトを打ち出しました。北米の読者の皆さまにも、作品を通じてその真意を感じ取っていただければと考えています。
北米の読者を想定したテーマやジャンルについて
今回は「SF」「ダークファンタジー」「ホラー」「LGBTQ」という4つのジャンルに焦点を絞りました。ヤングマガジンではこれまでも『AKIRA』『攻殻機動隊』『ドラゴンヘッド』『BOYS RUN THE RIOT』『頭文字D』など、ジャンル性の高い作品が海外で評価されてきました。特にSFジャンルには重点を置いており、少年漫画では扱いづらい複雑なテーマや世界観に挑戦することで、より深い読書体験を提供できればと考えています。これらは、北米においても人気の高い骨太なジャンルであり、ヤングマガジンらしいアプローチが可能だと確信しています。
作品選定や作家の起用基準
昨年10月に「海外向け増刊を制作する」という企画趣旨のもと、一般公募を実施し、100名を超える作家の皆さまにご応募いただきました。社内選考に加え、北米支社の現地スタッフ(ネイティブ)からの意見も取り入れながら、最終的に18作品を厳選いたしました。
北米市場は人種・宗教・ジェンダーなど多様性に関する配慮が求められる市場ですので、その点には十分注意を払いながら、コンセプトに即した作品を選定しています。
(コミックナタリー)